組合設立の思い

学研教室組合は、二大改革の強行をはじめとする学研エデュケーショナルの理不尽なやりかたに異議を唱える形で2021年1月2日に設立しました。

個々の指導者は、個人事業主という弱い立場のゆえ会社と対等には話し合いができず、いわれるまま我慢しなければならないため、ともすれば教室運営に行き詰まってしまいます。指導者の会を会社が労働組合として認めれば、団体交渉権が保障されることにより、はじめて協議できるようになります。組合結成以来、さまざまな問題で多くの指導者が悩み苦しんでいることがわかってきました。日本経済の停滞やコロナ禍で会社が苦しいことは十分に承知しており、会社が良い形で発展してこそ、私たち指導者も明るく自信を持ってこどもたちの学習指導に専念できます。情報を共有し、お互いの利益を上げるための工夫をしつつ信頼関係を維持していきたいと考え組合活動をしています。


学研塾のあり方

 学研教室での学習効果が発揮されるためには、週2回の通室がこどもたちの日常に組み込まれることが必要です。こどもたちは日々、家庭と集団活動をくりかえしながら成長していきます。わずかな隙間時間で習い事や学習塾へ通います。学習塾として学研教室が選ばれ、何年も通ってくれれば、通室が日常化されたと考えられます。長期の通塾は、学校での成績だけでなく、各科目の得手・不得手をわかってもらえているという安心感にも起因します。個々の生徒の思いを理解するためには、目線をこどもたちに合わせた対面指導を基本にすることが大切です。毎教室のわずかな時間かもしれませんが、理解し合う瞬間が積み重なれば、こどもたちが生きていく力の一助となり、これは創始者・古岡秀人氏が目指したことです。

 われわれ指導者が教室を開設し、はじめての生徒に接した時のことを思い出してみましょう。おそらく、私たち自身が生徒の学年だったこどもの頃の記憶が蘇り、どんな気持ちで課題に取り組んでいたかなど、当時の様子を重ね合わせて学習指導にあたることもあるでしょう。そして、生徒が増えていくにつれて、同じ課題に対しても、個々の生徒による多様な捉えかたや感情があることに気付きます。そして、学習効果を高めるためにあれこれと工夫を凝らしはじめます。このような積み重ねは、一人ひとりの生徒に対して個別対面指導をすることによってのみ得られる貴重な経験であります。

 教室運営・指導では、孤独にならないことです。来室するこどもたちに対しても、孤独感をもっていないか目配りする必要があります。塞ぎ込んでいた生徒が、話をきいてあげただけで元気になることも多々あります。「学研教室で先生と話すると、いやなことを忘れて楽しくなる。だから教室へ通います」と思ってくれると本当に嬉しいです。こどもは敏感で、不安をかかえていたり別のことを考えている人と対話すると、それを察知し心を閉ざしてしまうこともあります。だから私たち指導者は、教室では心配事を忘れましょう。毅然と寛容を上手に使い分けて会社と付き合い、開室時は気持ちをすっきりさせて学習指導に臨みたいものです。

 私たちは幸か不幸か、情報技術が飛躍する時代を生きてきました。これからしばらくは情報処理の時代が続きます。検索すれば知りたいことが手に入り、仮想的AIとのやりとりで仕事や勉強が一見はかどるかもしれません。電子端末が解禁になり、ゲーム感覚で勉強が楽しくなると喜んでいるこどもたちもいます。しかし、このまま進んでしまってよいのでしょうか。"紙に筆記具でかく"、これは人類が長年かかって得た画期的技術で、言語の上になりたちます。言語は本来、人間同士のコミュニケーションのためにあります。そして、顔を合わせて会話することによって、言葉には表れない気持ちを理解・共有することも可能です。一方、文字情報を認識し必要ならば自らの手で紙に書き写す操作によって、その内容が私たち自身の神経細胞のどこかに保存されます。この最小限の知識が認知能力の源です。検索して端末にコピー/ペーストしただけでは活用できず、非認知能力の増強にはならぬ所以です。デジタル化至上主義に陶酔して二大改革を強行するよりは、学研教室の原点に立ち戻って、こどもたちのために何を優先すべきか考えてほしいものです。